一発ホームラン

感心なことに、というか小さなこだわりで相方はシャツをクリーニングに出したことがない。洗うのは洗濯機だが、アイロン掛けはどんなに忙しくても必ず自分で。週末の夜のその姿はすっかり堂に入ったものだ。山頂や海岸など自然の中、どこへでも出掛けて行ってアイロン掛けをするスポーツ(?)をテレビで見た時はふふん、と鼻で笑っていた。彼ならかなりの好成績を出せるだろう、と私も思う。
これまでにこの業務を頼まれたことはほとんどない。しかし週明けの月曜日、休日も忙しく過ごしてアイロン掛けしたシャツのストックがなくなったことに着ていく段階になって気付いたのだろう。お願い…一枚だけ、と珍しく泣きつかれた。
帽子作りにアイロンは欠かせないから、まあこれは私にしてみれば朝飯前。ただ甘やかして彼がこの業務を放棄しだすと困るので「仕事と家事は別。プロの技は高いのよ~」と言いきかせてきた。まあ滅多にないことだし一枚だけ。ここは早くて美しい仕事を見せてやりますか。
「へええ。上手だなぁ、立体的だ~」この人は私の本業を知らないのだろうか?と思いながらも誉め言葉に悪い気はしない。「でもキミは一発ホームラン打てばいいんだもんね。プロはアベレージ。長く続ける方が大変なんだよ」

彼的にはほぼ綺麗にかかっていればOKらしい。毎年そこそこの打率でシーズンを締括るプロ野球選手のイメージなのだろうか。プロならホームランを打ち続ける気でやればいいのに、と一瞬思ったけれど、長距離打者でなければ毎回ホームラン狙いは難しいだろうし、コンスタントに打ち重ねるというのも難しそうだ。彼の言うとおり私は代打の一発屋。スタメン出場していたら調子の悪い日なんか「シャツの下の方は見えないからかけなくてもいいや!」ってことをやってしまいそうだと自分でも思う。

どうやらお見通しだったらしい。

「一発ホームラン」への1件のフィードバック

  1. うんな事ないよ~甘やかしちゃだめだよ~、、、緊張感ないと終わり!
    言葉に詰まったら恋も終わり サザンも休業となりマンネリ解消になる
    かな、男は、♂ は追っかけるのが本能、、、(~o~)

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