帽子の嫁入り

帽子に限らず商品としてのモノをつくるのは本当に難しい。デザイナーの個性が解りやすく出ていて、ある程度多数の支持を得られて、流行もちょっぴり意識しつつ、値段は抑えめだとなお嬉しい!いうような、実はとんでもないオーダーじゃないかと、煮詰まった状況に置かれると必ず思ってしまう。たとえ会心のデザインが出来たとしても、それのみで仕事を続けていけるほどのものなんてそう簡単に出来やしないし、これは!という斬新なかたちは、エッジー過ぎて理解を得られないまま、アトリエの隅でまるでひねくれてしまったように捻れて置かれていたりする。そんな可哀想なヤツに気付いた時には「この良さがわからないなんてねぇ~」などと我が子をいとおしむように優しい言葉をかけ、きれいに型を整えてやる。

永遠に解を得られない問題のような愚痴はさておき、今、蒲田のカフェギャラリーで40点くらいの作品を展示している。どれも多かれ少なれ、産みの苦しみを経て形になったものなので、やはりここしかない(この人に被ってもらいたい!)という処にお嫁にいってもらいたい、というのが親心。不思議なのは簡単にぽとん、と産まれたものの方が早く引き取られていき、難産だったものは割合、時間がかかること。もちろん例外もあるのだが、やはり試行錯誤して形になったものはどこかに迷いが見えてしまって、それが買う人を冷静にしてしまうのかもしれない。

「今日は豆大福のベレーがお嫁に行きました!」とお店のYさんから連絡が入った。その嫁入りに居合わせた帽子教室の生徒、Iさんがすかさずお式の様子を記念撮影して写メールしてくれた。「頭に載せたら取るのを嫌がって、結局被って帰られたんですよ♪」という嬉しい報告の通り、被っている姿が既にサマになっているとても可愛らしいお子さんの姿がそこにあった。

スイーツ(お菓子)をテーマにした帽子を作ろうと決めた時にすんなりとイメージが出来て、形にする手法にも迷いがなかったこの豆大福ベレー。納まるべきところにしっかり納まって幸せな帽子。愚痴は絶えることがないかもしれないが、こんなふうに素敵な出会いをして手を離れていく作品がある限り、やっぱりつくる事はやめられない。Mamedaifuku 次の作品をつくるためのエネルギーとなっていることは間違いない。

「帽子の嫁入り」への2件のフィードバック

  1. 初めてコメントします。ご無沙汰しています。
    大福豆のベレー、かわいいですね!
    作り続けるというのは本当に至難の業ですよね。
    私事ですが、商品として物を作るのであれば売れないものを作り続けていても(私にとっては)苦しくなってしまうし、かといってヒット商品を作り、世に同じようなデザインが充満してしまうのもあまり好ましくないというか・・
    さじ加減が難しいですね。
    でも、ひとつゆるぎない定番商品があるのは心強いかもしれません。
    最近冬が終わってしまってかぎばり編み主体の私はすごく煮詰まっていたんです。
    それで久しぶりに雑貨を作ってみたらなんだか風が通ったというか・・
    帽子にもいい影響を与えられそうな気がします。
    長くなりました。
    では。

  2. teaさん、お久しぶりです。ご活躍、時々こっそり拝見させて頂いています♪作りつづけることの大変さは作り手にしかわからないですよね。でも同じような思いを抱えながら新しい作品を創造している人がここにもいるということを知るだけでも、ずいぶん楽になります。雑貨、かわいいですね。私もたまには他のことにも手を出して、少し離れたところから帽子を見てみようかな…

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