ジェイドの誘惑(3)

その40分後、手ぶらで店を後にしていた。買う気がさらさら無かったわけでもないが、財布の中身はマグカップ1個分にも足りなかったのだ。随分長い間、遠巻きにしているだけで手にいれることなんて考えもしなかったのに…。コレクティブル雑貨を語らせたら即、マシンガントーク炸裂の店長を無理矢理黙らせて、数ある中からなるべく状態のいいものを選んでもらい、お取り置きして「ファイヤーキング見ないふり生活」はジ・エンド。

こうして2つのマグカップが我が家の食器棚のメンバーに加わることになった。これに一番似合うのは丁寧にドリップして入れたアメリカンコーヒー、しかもブラック。あまりいい組み合わせでないのはわかっているのだが、我が家の朝の定番はぼんやりした色のミルクティー。ナミナミと注いで毎日その感触に幸せを感じている。幸せ指数をこれだけ上げてくれるとなると、結局高いんだか安いんだかわからなくなる不思議なマグなのである。

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